[企業戦略]盛大ネットワーク、Sina.com買収劇とその後の中国メディアの扱いに見る一考察

  19日、米国ナズダック市場で中国IT産業ウォッチャーにとって衝撃的な事件が起きた。盛大ネットワークが中国最大のオンライン総合情報ポータルである新浪(Sina.com)、の公開株式20%あまりを取得し、即日中に筆頭株主となったのだ。新浪は日本で言えばYahooにあたるオンライン情報サイトのガリバー的存在であり、情報ポータルとして、中国においては事実上トップブランドに値する。IT産業の老舗的企業であり、その地域に根ざした情報提供力は、圧倒的だった。Nasdaq上場はITバブル崩壊以前の99年に果たし、中国ITサービスでは常に第一線を走ってきた。オンラインゲームサービスにおいても同産業におけるトップ企業であるNCソフトと合弁企業を設立し、『Lineage』シリーズの中国展開を行ってきた。最初の作品は遅れをとった上、業績は弾まなかったが、『Lineage II』では中国遊戯産業年次会の04年十大オンラインゲームに選ばれ、同時接続者数も商業サービスが始まって以来、6万人以上を保持してきた....末の話である。

  結局のところ情報ポータルにはなり得ても、E-Commerceポータルにはなりえないという中国の市場現実がつきつけた結果であるとしか言いようがない。クレジットカード保持者の存在が原則として必須のE-Commerceサービスがいまだに現実的でない中国において、情報ポータルの収入元はやはりバナーなどの広告からということになる。最近ではこれとは別枠で『付加価値サービス』といわれる諸業務から計上される売り上げが全体の半数以上を占めるようになった。だが、既存の流通網やネットカフェとの連携によって、「利益を生み出すしくみ」を作り上げた盛大ネットワークを市場は評価したようだ。クレジットカードなど存在しなくてもプラスチックのカードにパスワードを印刷し、既存の流通網に流すだけで、1カード、500円を創出する錬金術だ。

  さて、問題の買収劇に対する新浪の対応だが....新浪は事が発覚してから即座に本件に関する一連の状況を逐一報道する専門サイトを立ち上げている。しかも....隣には自社に関する紆余曲折と盛大ネットワークの紆余曲折について詳細が書かれているビジネス書の広告バナーがちゃっかりと張られている次第だ。今回の買収劇は盛大ネットワークから新浪に対して事前打ち合わせといったものがあったわけではない。(以後、事前に新浪と盛大ネットワークの上層部で同件に関する話し合いが行われましたが、新浪側はその提案を拒否していたようです)新浪のCEOも今回の動きに対する不快感を露骨に自社メディアで表明している。だからと言って情報価値があるこれら一連の事件に対し、自社が晒されている危険だからと言って情報を隠蔽するとか、自社ゲーム総合サイトにおける盛大ネットワークのゲームタイトルをすべて削除してしまうとかいう行動は一切していない。むしろルールに乗っ取った健全な議論を自社のサイトの中で行っていこうという姿勢を示しているのだ....企業に対する情報規制が激しいとされる中国でだ。この動向はインタクティブメディアがメディアの主流となりつつある中国の何を物語っているのだろうか?それに対し、日本は?そしてこれらが意図するメディアの将来は私たち一人一人が今後見つめていくことになるだろう。

【参照URL】
 新浪
 http://www.sina.com
 盛大ネットワーク新浪買収に関する専門サイト
 http://tech.sina.com.cn/focus/sina_snda_2005/index.shtml